2018年5月、厚生労働省から、あまりに衝撃的で悲しいデータが発表されました。
調査内容は「妊娠中〜産後1年未満の女性の死亡原因」。
2015〜2016年の2年間で、妊娠中から産後1年未満に亡くなった女性の数は全国で357人。
そのうち、「自殺した妊産婦は少なくとも102人」と発表されました。
※東京新聞 TOKYO WEB 2018年9月6日 朝刊 「妊産婦死亡 1位は自殺 産後うつ ケアを」
妊産婦の死亡原因は、他に「がん」や「心疾患」などもあります。
しかしそれらの人数を上回り、死亡者の約3分の1が「自殺」というのは非常につらい現実ですよね・・・。
産婦の自殺原因は、「産後うつ」の疑いが濃厚。
産後うつは、産婦の10%〜15%がかかると言われています。
つまりママの10人に1人以上は「産後うつ」に。
以前、女性アナウンサーが「産後うつ」で自殺し話題となりましたが、決して珍しいことではないんです。
いったい「産後うつ」とは、どんな症状を指すのでしょうか。
そして「産後うつ」の予防・改善には、どんな対策が必要なのでしょうか。
ママはもちろん、パパも発症する可能性がある「産後うつ」。
赤ちゃんや家族が悲しい思いをしないためにも、一緒に考えていきませんか?
Contents
産後うつの症状とは?
まず「産後うつ」にはどんな症状があるのか、見てみましょう。
「産後うつ」の前兆?まずは「マタニティ・ブルー」の症状をチェック
「産後うつ」を知るには、まず「マタニティ・ブルー」を知ることが必要です。
マタニティ・ブルーとは、出産後間もなく訪れる症状で一過性のもの。
徐々に治まってくると言われています。
発症割合は産後うつより高く、「多くのママが通る道」といえます。
マタニティ・ブルーの主な症状は、以下のとおりです。
- ちょっとしたことでイライラ・不安が募る
- 周囲のちょっとした言葉に傷つく(子育てに関することなど)
- 涙もろくなる。理由もないのに涙が出る
- 眠れない
- 疲れや頭痛がとれない
- 集中力が落ち、考えがまとまらない
- 子育てに自信がもてず、不安に襲われる
以上のような症状は、特に初産の女性ならしばしば起きます。
私自身、産後1週間ぐらいの時、手伝いに来ていた実母に激怒。
理由は、母が育児グッズの使い方を覚えようとしなかったから。
後になって考えれば、怒るようなことではないのですが、精神的に不安定だったのでしょう。
夫や母に対し、ものすごくどうでもよいことでイライラした記憶があります。
しかし何とか、「産後うつ」というほどの症状には至らず徐々に心は鎮静化。
気がつけば1年2年・・・と過ぎ、紆余曲折ありつつも、育児が楽になっていきました。
でもなかにはマタニティ・ブルーが長引き、症状が深刻になる人が。
そう、恐ろしいのは「マタニティ・ブルー」から「産後うつ」に移行することなんです。
「産後うつ」の発症時期・期間・症状とは?
子育ては、何と言っても「人間を育てること」ですから、不安になって当然。
わが子を愛する親だからこそ、「私に子育てなんてできるのかしら」と恐怖・不安に襲われてしまいます。
でもそれが長期化・深刻化すると「産後うつ」となり、最悪の結果を生むことになります。
「産後うつ」による自死を防ぐためには、「産後うつ」の症状を知ることが重要。
「私、産後うつなの?」
「奥さん、大丈夫かな」
「現在妊娠中。どんな症状が出たら産後うつになるの?」
予防・改善のためにも「具体的な症状」について知っておきましょう。
「産後うつ」が現れる時期・期間
産後うつの多くは、出産後2週間〜1ヶ月前後で発症。
症状は数ヶ月以上続くことが多いです。
マタニティ・ブルーは一過性といえますが、産後うつは長期化するのが特徴。
心身の状態がどんどん深刻になっていきます。
マタニティ・ブルーの症状が1週間以上続く場合は、「産後うつ」を疑ったほうが良いでしょう。
「産後うつ」の症状とは?
では「産後うつ」の具体的な症状について、見てみましょう。
- 極度に悲しくなり、たびたび泣く
- 無力感や絶望感がある
- 食欲が落ちる、または過食
- 眠れない、または過度に眠る
- 物事に対応できず、日常生活を送ることも困難になる
- 自分を責める
- 赤ちゃんがかわいいと思えない
- 赤ちゃんを過度に心配する
- 赤ちゃんを育てる自信がない
- 頭が重い
- 倦怠感がある
- 以上のような症状を持っていることへの罪悪感がある
さらに症状が悪化すると、以下の症状が現れることもあります。
- 自殺を考える
- 幻覚が出る
- 暴力的思考に陥る
- 奇異な行動に出る
- 子供を傷つけたいと考える
自殺や虐待は、産後うつの症状のひとつともいわれています。
ではどうすれば、産後うつを予防・改善させることができるのでしょうか。
取り返しのつかない事態になる前に、一緒に考えていきましょう。
産後うつの原因とは?
産後うつの原因は、まだ明確にはわかっていません。
しばしば「ホルモンバランスの乱れによる情緒不安定」と言われますが、それは原因の端緒。
実は産後うつの原因は、もっと根深いところにありそうです。
産後うつ最大の原因は、精神的なもの。
「周囲からの抑圧」や「模範的なママになろうとすること」が、産後うつを発症させ、重篤化させていると思われます。
たとえば「産後うつ」発症のきっかけとして、「里帰りからの帰宅」が挙げられます。
実家の助けが終わり、いよいよ夫婦だけで子育てとなると不安でいっぱいになります。
ちなみに私は里帰りはしなかったのですが、実母が産後10日間ほど来てくれました。
実母が帰る際、ものすごい不安に襲われたことを未だに覚えています。
何とか「産後うつ」にまでは至らなかったものの、その時の不安感は10年以上経っても忘れないもの。
実家の助けがなくなった瞬間から「産後うつ」を発症する人が多いのも、無理はありません。
その他、「産後うつ」発祥のきっかけ・原因には、以下のようなものが挙げられます。
- 「完全母乳で育てよう」と思ってしまう
- 紙おむつを否定し、布おむつで頑張ろうとする
- 「実家に甘えるのは子育てしてることにならない」と思い込む
- 育児はもちろん、掃除や食事も完璧にしようとする
- 「産後の肥立ちが悪い」「怠けている」と言われた
産後うつは、「真面目な人」や「完璧主義な人」がなりやすいと言われています。
「母乳じゃないと!」「旦那さんのために家もキレイにしておかないと!」「母親は強くないと!」「布おむつじゃないと、おむつが取れない!」
そんな風に思い込んでいると、どんどん心も身体も蝕まれ、知らず知らずのうちに深刻な状況に陥ります。
真面目で完璧主義な性格を直すのは、なかなか難しいとは思います。
でも「●●しなきゃ!」「●●じゃなきゃ!」と少しでも思ったら、ピタッと止まり、「まあいいか」と思うことが大事。
ママと赤ちゃんのためには、そんな「いい加減さ」が最も大切だと感じます。
産後うつを防ぐには?
では「産後うつ」を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。
具体的な対策を考えていきましょう。
できるだけ体を休める
赤ちゃんが昼寝をしている間に、家事をしようと思っていませんか?
「産後うつ」の予防には休息が非常に大事。
赤ちゃんが寝ている時は、一緒に寝てしまいましょう。
家族や友人等に助けを求める
疲れている時、困っている時に助けを求めることは、恥ずかしいことではありません。
むしろ勇気のある、賢明なことです。
家族や友人等に、いくらでも助けを求めましょう。
他の母親とおしゃべりできる場に出かける
各自治体では「赤ちゃん会」など、他の母親同士で集まれる場がもうけられています。
私も産後2ヶ月から参加。
公民館の赤ちゃん会や、NPOの子育て支援センターなどに頻繁に足を運びました。
そこで思いを吐き出しあったり、一緒にご飯を食べたり、職員の方にちょっと見てもらったりすると、ものすごく心も身体も楽になります。
信頼できるママ友もでき、育児がとても楽しくなりますよ。
一人で出かける時間をつくる
これはパートナー等の協力がいりますが、一人で出かける時間をつくりましょう。
1時間でも、近所のカフェでコーヒーを飲めたり、文庫本を読めたりする時間ができるだけで、非常に心が楽になります。
子どもが生後数か月頃になったら、夫に赤ちゃんをみてもらい、一日外出してみても。
私の母は、長兄が生後6ヶ月の時、父に子守を任せ、ひとりで皇居などを散策したとか。
私自身も子どもが生後半年の頃、夫に子どもをみてもらい、渋谷を歩き回りました。
とはいえ、つい子どもの服を買っちゃったりして、子どものことは頭から離れないんですけどね。
でも「いざとなったら私は独りの時間を過ごせるんだ。誰かを頼れるんだ」と思えることは非常に重要。
その「気づき」は、その後の育児をずっと楽にしてくれます。
周囲はママに、完璧を求めない
「産後うつ」の原因には、周囲からのプレッシャーも挙げられます。
順調に育児をしていたのに、周囲が「ミルクをあげるなんて」「実家に頼るなんて」などと言われることで、一気に「産後うつ」を発症することがあります。
ママの周囲の人は、ママを批判しないようにしましょう。
赤ちゃんのために「良かれ」と思って批判すると、却って赤ちゃんを傷つけることになります。
「産後うつ」になったら?
もし産後うつになったら、どうすればよいのでしょうか。
「産後うつ」は、まず自覚症状が出たらすぐに専門家に相談するのがいちばんです。
つい「私がうつ病なんて」「夫に協力してもらえば、すぐ治る」などと放置しがちです。
メンタルのことで病院に通うことに、抵抗がある人も多いことでしょう。
でも産後うつは「気のせい」ではなく、れっきとした「病気」。
普通の病気と同じく、早いうちに専門家に相談するのが重要です。
- 各自治体の保健師・助産師
- かかりつけの産婦人科医
- なかなか軽快しない場合は、精神科医
現在、「産後うつ」予防の健診費を助成する動きが出ています。
悩みを相談することは、恥ずかしいことではありません。
とても勇敢で賢明な行動です。
「もしや」と思ったら、ためらわずプロフェッショナルに相談してみましょう。
さいごに
産後うつは、今や世界的な問題となっています。
ママ自身も、そして周囲の方々も、どうかなるべくおおらかに、体を休めながら、ゆっくり育児をしてください。
フェイスブックで「素敵なママライフ」を送っているように見える友達も、実は育児には悩んでいます。
「他のママはできるのに、私はできない」なんて思い込みは、はっきり言って幻想。
みーんな育児は不安でいっぱい。
「絵にかいたような素敵ママなんて、この世に存在しない」と思っておいたほうが良いです。
でももし恐怖や不安感、絶望感に襲われたり、頻繁に涙が出るようならすぐに相談を。
早めに対策をとれば、回復も早くなります。
「産後うつ」は決して恥ずかしいことではありません。
つらかったら、いくらでも助けを求めましょう。
大丈夫、必ず誰かがあなたを助けてくれますよ。