2017年の流行語に、「ワンオペ育児」がノミネートされました。
そして2016年には、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が大ヒット。
家事や育児といった無償労働を「愛情の搾取」とずばり表現し、おおいに話題を呼びました。
そして最近では、熊本で女性市議が赤ちゃん連れで市議会に出席し、議長から注意を受ける騒動が。
議場に子連れの女性市議を厳重注意処分 熊本市議会 #nhk_news https://t.co/fnFnpfZ6xD
— NHKニュース (@nhk_news) 2017年12月12日
やり方が正しいかどうかはわかりませんが、待機児童増加・保育所不足の状況に一石を投じる出来事になりました。
今、日本はかつての「男は仕事、女は家事」の風潮から、大きく舵を切る局面に立っています。
ところが気がつけば、女性は家事も仕事も育児もやる羽目に。男性の育児参加が、女性の社会進出に追いつかない状況となっています。
また専業主婦は専業主婦で、完全に家に閉じ込められ、「孤育て」という言葉までささやかれます。
それを象徴する言葉が「ワンオペ育児」。
家族が仲良く一生過ごすためには、専業主婦家庭も共働き家庭も目を背けてはいけない問題です。
Contents
協力的な夫なのに、私は「ワンオペ育児」だった
「ワンオペ育児」とは、家事・育児・仕事を夫婦の片方(主に妻)が全て担うこと。
人手不足に陥った外食産業が、店員1人で全ての仕事を深夜までこなす状況になったことを「ワンオペレ—ション」と呼ぶことから名づけられました。
実は私も、子どもが産まれてから7年ほど、ほぼ「ワンオペ育児」でした。
でも、夫が非協力的なわけでは全くありません。
オムツ換え・ミルク・お風呂・離乳食を食べさせる等々なんでもこなし、「父親として申し分なし!」の夫なんです。
それでもわが家はなぜか、「ワンオペ育児」に。
私はフルタイムの仕事をしながら、子どもの世話、保育園の送り迎え、小児科への通院、炊事洗濯掃除、町内会の会議出席や行事の準備等々を一手に引き受けていました。
今思えば、私は自ら「ワンオペ育児」にしてしまっていたのかもしれません。
他のワーママ(ワーキングマザー)の方と話していても、同様の意見がチラホラ。
夫は協力的なのに、気がつけばワンオペ育児・・・そういう家庭が多いんです。
「ワンオペ育児」の原因といえば、「旦那さんが非協力的」と思いがち。
なかにはそういうご家庭もあるかもしれませんが、最近の男性はおおむね家事・育児に協力的。
では、なぜ「妻のワンオペ育児」がなかなか減らないのでしょうか。
かつて私が参加していたワーママ交流会や、ママ友との交流、パパさんたちの話などを交えながら、原因を探っていきましょう。
ママたちの本音「夫は信用できない」「いないほうがまだいい」!?
かつて私は、児童館で行なわれる「ワーキングママ交流会」の進行役をしていました。
10年ほど前になるので、まだ「ワンオペ育児」という言葉はない時代。
でも毎回噴出するのは、いわゆる「ワンオペ育児」に対する不満でした。
その児童館には夫婦で訪れる方も多く、常に「イクメン」がたくさん来ていました。
ママたちが交流会で話している間、赤ちゃんのオムツを換えに行くパパさんもたくさんいます。
つまり、いわゆる「イクメン」を夫に持ちながら、ママは「ワンオペ育児」に不満いっぱいという不思議な状況が生まれていたんです。
そしてよくよく話を聞いてみると、「夫が協力的なのに、あえてワンオペにしてしまっている状況」が見えてきました。
その理由は主に2つ。
「夫の子育ては信用できない」と「いると却ってイライラする」です。
たとえば「夫の子育ては信用できない」には、こんな意見がありました。
- 虫歯の治療中だからお菓子は食べさせないようにしているのに、勝手にチョコレートをあげていた。
- 原材料表示をよく見ずに、アレルギー食材の入ったお菓子を食べさせ病院行きになった。
- お風呂を入れるのを任せたら、夫がお風呂で寝ていた。
- 「子どもに微熱があるから湯船には入れずに、軽くシャワーを浴びせるだけにしてね」と伝えたら、長々と熱いシャワーを浴びせていた。
- 私が体調を崩し1週間入院したら、その間まったく子どもの歯を磨かず、思いっきり虫歯になった。
パパは時々、「妻の日頃の配慮・努力をぶち壊す」ことをしがちです。
確かにオムツ換えやミルクなどを率先してやってくれるので、子育てにきちんと参加はしているのです。
でもママたちが不満を募らせ、結果的にワンオペになってしまうのは、ママの努力を一撃で壊してしまうから。
ママは毎日毎日、細かいことまで神経を研ぎ澄ませて育児をしています。
- 「アレルギーを起こさないように、毎回原材料をチェック」
- 「虫歯ができたから、甘いお菓子は避けている」
- 「スマホはなるべく見せない」
- 「お風呂やシャワーが熱くないか、常に自分の手で確かめる」etc
個人差はあるでしょうが、実に細かいところまで気を配って育児をしています。
でもパパはどうしても、子どもと接する時間が短くなりがちなので、気がつかないことも多数。
また日頃触れあう時間がない分、つい甘くなってしまう面もあるようです。
さらに「夫の子育てが信用できない」理由として、「言葉が不足している」ことが挙げられました。
保育園や幼稚園の先生、小児科の医師に肝心なことを伝えない。聞いてこない。
そんなことが重なると「もういい! 私がやったほうが早くて確実よ!」という展開になりがちです。
たとえばこんな例があります。
「子どもが嘔吐した」と保育園から連絡があり、夫が仕事を抜けて病院に病院に連れて行ってくれた。
ところが夫は、医師に「嘔吐したこと」を告げなかった。意味ないじゃん!
保育園の帰りに三種混合の予防接種をするため、私が早めに迎えにいくことに。
「保育園の先生に、早く迎えに行くことと、予防接種の種類を伝えてね」と言っておいたのに、いざ迎えに行ったら全く伝えていなかったことが発覚。しかも何の予防接種かも把握しておらず、何だか脱力・・・。
こう言っては男性諸氏に申し訳ないですが、男性の育児はどこか危うい面がチラホラ。
結局、ママたちは「私がやるからいいわよ!」ということになってしまいます。
そんなことが度重なるせいでしょうか。
悲しいことに、「夫がいると却ってイライラする」という意見も多数出ていました。
- 食事作りとか手伝ってくれるのはいいんだけど、後片づけが大変。
- 明日使うと決めておいた食材を、勝手に使ってしまった。
- 洗濯ものの畳み方がいい加減。結局、畳みなおすようになる。
- 手伝いたい気持ちは伝わってくるんだけど、基本的に「指示待ち」でボサッと突っ立っている。その姿にイライラする。それなら、いない方がまだまし・・・。
その昔、「亭主元気で留守がいい」なんて言葉が流行りましたが、その現象は今でも健在!?
中には、子どもの習い事の発表会でも「夫がいないほうが気楽」とつぶやくママもいます。
何だか浮かばれない「イクメン」たち・・・。
「ワンオペ育児」の背景には、こんな物悲しい現実もあるのです。
では、パパたちの本音は?
ワーママ交流会には、パパも多数参加していました。
パパたちの意見で目立ったのは「家事・育児をやってもやらなくても怒られる」という言葉です。
前述の「夫がいると却ってイライラする」でも書きましたが、家事や育児をやると、妻から「ここが悪い」「あそこができていない」と指摘があり何だかションボリ。
結局、「何をしていいのかわからずボーッと立ち尽くす」ことに。
なかには「何をしても妻の機嫌が悪いから、休日はフットサルに行く」という「開き直りパパ」もいました。
そしてサッカーやフットサルから帰ってくると、「私が大変なのにサッカーをしに行くなんて、へえ〜、ワールドカップにでも出るの?」などと嫌味を言われたとか。
家事・育児に参加したいパパは、実はたくさんいます。
でも「やっても不満、やらなくても不満」では、確かに逃げ出したくもなりますよね。
こう書くと、まるでママさんを責めているようですが、パパの家事にはとりあえず「ダメ出しをしない」ことが大切なようです。
女性からすれば、「何でそんな気を使わなきゃならんのか!」と言いたくなりますけどね・・・。
「ワンオペ育児」、他にはこんな原因も
ママが「ワンオペ育児」になってしまっている背景には、こんなことも考えられます。
作家・酒井順子さんが提唱した「男尊女子」という思考です。
男尊女卑ではなく、男尊女子。
これは、男性をついたててしまう女性のことを指します。
実は私がその「男尊女子」。
父が金融マン、母が専業主婦、出身が保守的な長州藩(関係ない!?)という家庭で育ったせいでしょうか。
いまだに「女性は男性の三歩下がって・・・」「男子厨房に入らず」なんて考えてしまいます。
一方、夫は両親ともに教員で共働きだったため「女性が働くことに大賛成!」派。
家事も育児も率先してやってくれようとします。
でも私はなかなか夫の先進的な考えについていけず、「気がつけば今日もワンオペ」という状況に。
「家事と育児を殿方にやらせるなんて!」と思ってしまい、フルタイムで働きながら家事・育児もこなしていました。
「ワンオペ育児」の原因には、女性の中に潜む封建的な思想もあるのかもしれません。
「ワンオペ育児」、どうやって解消する?
ではどうすれば、「ワンオペ育児」を解決することができるでしょうか。
私の経験から考えると、以下の4つが考えられます。
情報共有をしっかりと行なう
子どもの病気や予防接種、保育園・幼稚園であった出来事、子育て観・教育観などを細かく伝えあいましょう。
会議みたいに堅苦しくしなくても大丈夫。
おしゃべり感覚で気軽に伝えあいましょう。
特に子育て観・教育観などは、自分とは違う意見を聞くことがとても大切。
夫・あるいは妻の意見をそれとなく引き出すことで、「あ、そう考えればいいのか」と楽になりますよ。
「口に出さなくてもわかってもらえる」と考えるのはNG。
必ず口に出して、子どもに関するあらゆることを話し合いましょう。
お互いの強み・弱みを活かす
「家事と育児は女性のほうが向いている!」と思いがちですが、完璧な人間なんていません。
実際に旦那さんに任せてみると、意外な強みを発揮し、心の底からありがたーく思えることがあります。
たとえばわが家の場合、子どもが胃腸炎になった時に夫が「強み」を発揮。
短気で大ざっぱな私とは違い、夫は気長で几帳面。
時間をきっちり測って、少しずつ少しずつ、ミルクを何時間もあげつづけてくれました。
また、そんな気の長さは、子どもが小学校にあがってからさらに力を発揮。
勉強を教える際、絶対に怒ることなく、じっくりと丁寧に教えてくれます。
夫婦それぞれ、必ず異なる「強み」があるもの。
それを発見し、「これはあなたが得意だから、任せたいなぁ(ハァト)」なんて言えば、意外と喜んで引き受けてくれますよ。
便利なものは何でも活用する
家事・育児について便利なものは、何でも活用してみましょう。
買い物なら、ネットスーパーや生協。
食洗機、お掃除ロボット、乾燥器付き洗濯機など便利家電も思い切って買いそろえてみましょう。
家事の外注を頼むのもおすすめ。
清掃業者や、料理の「つくりおき」をしてくれる業者さんにお願いすると、毎日家はピカピカでおいしいご飯も食べられます。
子どもの預かり・送り迎えは、地域のファミリーサポートの方(ファミサポさん)などにお願いすると安心です。
ついつい「家事をアウトソースするなんて・・・」と引け目を感じてしまうかもしれませんが、どうにも手が回らない時には思い切って頼んでみましょう。
「もっと早く頼めばよかった!」と思うこと請け合いですよ。
男は「頼られたがっている」と考える
以前、「女性はこうすればモテる」みたいな本を読んだことがあるのですが、そこに書かれていたのは「男性に頼ること」。
実は男性は頼られたいと思っており、小さなバッグひとつでも「ちょっと持っててくれる?」なんて頼むと、テンションが上がるそうです。
家事・育児について覚束ない点もあるとは思いますが、「男性は頼られると喜ぶ」と考え、ちょっとしたことを頼んでみてはいかがでしょうか。
さいごに
共働き家庭がスタンダードになりつつある今、「ワンオペ育児」は深刻な問題です。
また、専業主婦は専業主婦で「家事・育児を完璧にやらなきゃ!」と構えすぎてしまい、身体を壊す人もいます。
家族というチームが気持ちよく毎日を過ごすためには、何が必要か。
夫婦でたくさんおしゃべりをして、気持ちや情報を共有しあえれば答えは見つかるはず。
その時、きっとあなたは完全に「ワンオペ育児」から脱出!
夫婦がたくさん会話をすれば、お子さんの笑顔も増えますよ。