ひと昔前、当時の女子小中学生の友「りぼん」「なかよし」を卒業した私は、白泉社の漫画に夢中でした。
白泉社は恋愛、友情、夢、希望、感動、想像力など、多くのものを私に教えてくれ、私はすくすくとマンガオタクへと成長しました。現実の友達は少ないですが、後悔はありません。
そんなマンガオタクが今でも夢中で読めるSF・ファンタジーを紹介します。
Contents
日渡早紀「ぼくの地球を守って」
女子高生の主人公が、前世の世界を夢で見るようになり、前世での仲間たちと現世でも関わるようになります。
その前世の仲間たちと、それぞれが見た夢を繋ぎ合わせていって、前世で何が起こったのかを解明していくというのがストーリーの主軸です。
前世での人間関係と、現世での人間関係が、複雑に絡み合っていくのですが、描写が上手く、それほど混乱せずに読めます。それどころか、前世に何があったのか知りたくて、ストーリーにどんどん引き込まれてしまいます。
前世に何があったのか、知りたい気持ちと知りたくない気持ちの主人公の葛藤や、現世での主人公や周りの変化・成長がとてもうまく描かれています。
現世の主人公と、同じマンションに住む小学生の男の子とのラブストーリー、また前世でのラブストーリー、たくさんのエピソードがあって、とても読み応えがあります。 ラストまで色々散々ごったごたしますが、きれいに終わるので、読後感はさわやか!
清水玲子「月の子 MOON CHILD」
売れないダンサーの主人公が、車を運転中に道路に飛び出してきた男の子を避けて事故を起こしたことをきっかけに、その男の子と一緒に暮らすことになります。
その男の子は記憶を失っていて、自分の名前も思い出せない状態で主人公と暮らしていましたが、徐々に自分のことを思い出していきます。その男の子は産卵のために仲間と一緒に別の星からきた人魚だったのです。
清水玲子さんは絵柄がとてもきれいです。そのきれいな絵で、チェルノブイリの原発事故を絡めて人間の残酷な面などもうまく混ぜ込んだ、壮大なストーリーを描いています。
童話「人魚姫」をモチーフにしているので、絵本で読んだことのあるフレーズが出てきたりして、懐かしい気持ちにもなります。きれいなものをとてもきれいに、怖いものもとても怖く描く画力のある漫画家さんです。
主軸は主人公のダンサーの男性と、事故で出会った男の子(実は女の子・・・事情が複雑です)とのラブストーリーですが、同時進行で繰り広げられる脇役同士の恋愛模様も大変オススメポイントです。
原発事故を扱って、途中重いストーリー展開になりますが、ラストはハッピーエンド、何回読んでも感動!
清水玲子さんは私の大好きな漫画家さんですが、ちょっとグロテスクな漫画やアンハッピーエンドな重い漫画を描いたりしています。この作品はその中では読みやすいので、清水玲子さん初心者の方にはオススメです。
ひかわきょうこ「荒野の天使ども」「時間をとめて待っていて」「それなりにロマンチック」
舞台はアメリカ西部劇の世界、なのでSF・ファンタジーとはちょっと違うのかもしれませんが・・・主人公は8歳の女の子。
この子が17歳の少年3人を仲間につけて、無法者をやっつける・・・というストーリー。これはもはやファンタジーの世界と呼んでいいのでは。
三作題名を連ねていますが、シリーズで、「荒野の天使ども」は8歳の女の子が大活躍する痛快コメディ、「時間をとめて待っていて」は前作の8歳の女の子が17歳になり、前作で17歳だった少年との年の差ラブコメディ、「それなりにロマンチック」はさらに「時間をとめて待っていて」の17歳の女の子の恋がかなったその後の話になります。
この女の子が、勝気というかおてんばというか・・・とにかく正義感が強く、度胸があって悪漢にも臆さず立ち向かい、ストーリーは勧善懲悪。見ていて爽快です。なおかつ8歳の頃は子供らしいけなげさがいじらしいし、17歳での恋愛模様も女心をときめかせてくれます。もちろんラブストーリーはハッピーエンドだし、読めば必ず楽しい気分になれます。
山口美由紀「フィーメンニンは謳う」「タッジー・マッジー」
山口美由紀さんは雰囲気のある優しいファンタジーを描くのがとっても上手な漫画家さんです。
この2作品もその代表作で、「フィーメンニンは謳う」は主人公の女の子が、通学路で幼い女の子を拾います。その女の子は実は妖精の女王となる子供で、主人公はその教育係役として妖精の世界へと旅立ち、女の子が女王になるまで育てることになるというストーリーです。
「妖精の花園」とか「聖なる乙女」とか「魔物」とか、これぞファンタジー!という世界で、基本はコメディの、感動あり恋愛ありの楽しいマンガだと思います。
続編の「タッジー・マッジー」は主人公が変わり、その主人公はなんと「魔女」。続編といっても前作の主人公は出てきません。前作の主要人物だった少年と、主人公の魔女とのラブコメディになっています。
こちらはどこか違う世界に行くという話ではなく、「魔女」という異端の存在が、どうやって「この世界」で人間と共存して生きていけばいいのか模索するという話になっています。
どんくさくて要領の悪い主人公が頑張る姿が、とてもけなげで応援したくなります。どちらも話が複雑ではなく、ハッピーエンドで楽しい気分になれるので、ちょっと気分が落ちている時には特にオススメですよ。
山内直実「なんて素敵にジャパネスク」
氷室冴子さんの小説がマンガ化されたもので、平安時代の貴族のお姫様が主人公のマンガです。
こちらもファンタジー・SFに分類するのは難しいかもしれませんが、実際の平安時代からかけ離れてる度を思えば、ファンタジーとも言えるのではないでしょうか。
「内大臣家の深窓の姫」であるはずの主人公のお姫様は、大したおてんば姫で、とにかくやりたいことはやる!納得できないことは納得できるまで追及する!というタイプの女の子で、「平安時代のお姫様」のイメージからかけ離れた存在です。
そのおてんば姫と、今で言う草食系男子である年下の幼馴染との恋愛が主軸にあり、その二人を中心に起こる陰謀や事件を解決していくというストーリーになっています。
平安時代の貴族の暮らしや常識などがマンガで楽しく読めるのも、このマンガのオススメポイントです。学校で古典の授業がどうしても苦手!という方が読むと、古典の世界が少し身近に感じられるかもしれません。
さいごに
私は育児で疲れている時期に、「子供のPTA問題に巻き込まれて七転八倒するキャリアウーマン」が主人公の小説を読んで、自分の将来を悲観して最期まで読めなかったという経験があります。
疲れている時や落ち込んでいる時には楽しい話を読むのが一番ですよね。
今回紹介した5冊はそんな時に安心して読めるマンガです。別世界の楽しい話に没頭して頭をスッキリさせて、厳しい現実と戦う英気を養いましょう。