突然ですが、問題です。
日本国内における年間死亡者数は、次のうち、どちらが多いでしょうか。
- 受動喫煙
- 交通事故
答は、1.の受動喫煙。
実は日本国内だけで、年間1万5千人が受動喫煙による疾患で亡くなっているんです。これは、交通事故死亡者数の約4倍なのだそうです。
受動喫煙による死亡者数は、世界では約60万人。今や受動喫煙は、世界レベルの大問題となっています。
それにも関わらず、日本では「受動喫煙防止」に関わる健康増進法の改正が見送りに。
また、厚労省が定める「受動喫煙を規制する場所」も例外(=喫煙可能な場所)が増えるばかりです。2020年の東京オリンピックは「たばこのない五輪」を目指すとのことですが、このままではかなり難しそう・・・。
日本はまだまだ、タバコ対策については後進国と言わざるを得ません。
そんな中、小池百合子東京都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」が受動喫煙防止への動きを開始。
子どもの受動喫煙を防ぐための条例案を、9月の都議会に提出する方針を明らかにしました(2017年8月4日現在)。
条例案の内容は、子どもがいる家や自家用車の中、通学路などでの禁煙について努力義務を課すものだそうです。
受動喫煙防止に向けて、様々な動きがみられる昨今。ここで今一度、私たちも受動喫煙について真剣に考えてみませんか?
受動喫煙にはどのような影響があるのか、受動喫煙をしない・させないためにはどうすればよいのか。
喫煙者の方も非喫煙者の方も、一緒に考えていければと思います。
Contents
受動喫煙って何?
まず受動喫煙について、簡単にご説明しますね。
タバコの煙は、大きく3つに分けられます。
- 喫煙者自身が吸いこむ「主流煙」
- 火のついたタバコの先から立ち上る「副流煙」
- 喫煙者が吐き出す「呼出煙」
受動喫煙とは、副流煙や呼出煙を吸わされてしまうことを指します。
実はこの副流煙、主流煙よりも有害物質の濃度が高いんです。
タバコの煙には、主に「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」が含まれています。
それぞれの健康被害は、かなり恐ろしいもの。
- ニコチン:血圧や心拍数を上昇させ、心臓に負担をかける。
- タール:発がん性物質を大量に含んでいるため、がんになる危険性を高める。また、がんの進行を早める。
- 一酸化炭素:血液中に酸素が行きわたるのを妨害し、身体を酸欠状態にする。そのため心臓や脳が働かなくなる。
副流煙には、このような有害物質が主流煙よりも高濃度に含まれているんです。
副流煙に含まれる有害物質の濃度は、主流煙を1とすると以下のようになります。
- ニコチン:2.8倍
- タール:3.4倍
- 一酸化炭素:4.7倍
タバコを吸っていないのに、これほどの有害物質を吸わされてしまうとは理不尽としか言いようがありませんよね。
また、喫煙者の吐き出す煙「呼出煙」も問題です。
喫煙者の息からは、タバコを吸っていない時でも一酸化炭素などが吐き出されています。
喫煙者の方は、
「今はタバコを吸っていないから、誰にも受動喫煙をさせていない」とお思いかもしれませんが、それは大間違い。
喫煙者はタバコを吸っていない時でも、周囲の人に受動喫煙をさせてしまっています。
タバコが周囲に与える悪影響は、私たちの想像をはるかに超えるレベルなんです。
受動喫煙にはどんな影響があるのか
副流煙や呼出煙に有害物質が高濃度に含まれていることは、よくわかりました。
では実際に、受動喫煙は私たちの体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。
受動喫煙による健康被害は「ほぼ確実」から「確実」にランクアップ
受動喫煙による年間死亡者数は、世界で60万人、日本でも少なくとも1万5千人いることは、冒頭で書きました。
でもなかには、こう思う方もいらっしゃることでしょう。
「そんなことを言っても、本当に受動喫煙で死んだかどうかわからないじゃないか」
タバコの煙は、ナイフやピストルのように目に見えるものではありません。よって、受動喫煙が本当に人間の体を蝕むものなのかわかりにくいですよね。
でも近年、受動喫煙による健康被害は次々と明らかになっています。
たとえば国立がん研究センターは昨年、受動喫煙による肺がんリスクを「ほぼ確実」から「確実」にランクアップ。
肺がんに罹患している人の「家族の喫煙歴」や「配偶者の喫煙の有無」などを調査した結果、「肺がんと受動喫煙との間に因果関係はある」と結論づけられたんです。
参考:http://www.healthcare.omron.co.jp/
受動喫煙が招く疾患には、こんなものが・・・。
受動喫煙が招く病気は、肺がんだけではありません。
たとえば「受動喫煙によって起きる病気」として「確証」されているものには、次のような疾患があります。
- 肺がん
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 副鼻腔がん
- 胎児の成長阻害(低体重児等)
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
- 子どもの気管支炎
- 肺炎
- ぜんそく
また「受動喫煙によって起きる病気」として「示唆」されるものは、次のような疾患です。
- 子宮頸がん
- 呼吸機能低下
- 流産
その他にも、
- 子どもの中耳炎
- 脳卒中
- 動脈の損傷・脆弱化・血栓
- 早産
参考:タバコとわたしたち (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)
等々が挙げられます。
受動喫煙にさらされていると、どれだけこれらの疾患にかかりやすいかというと・・・
- 肺がん:1.3倍
- 虚血性心疾患:1.2倍
- 脳卒中:1.3倍
- 乳幼児突然死症候群(SIDS):4.7倍
となっています。
ナイフやピストルを「目に見える凶器」と言うのなら、受動喫煙はまさに「目に見えない凶器」と言えるのではないでしょうか。
世界で16万人以上の子どもが、受動喫煙の犠牲に
WHOは2010年、受動喫煙による年間死亡者数のうち約16万5千人が5歳未満の子どもであることを報告しています。
乳幼児突然死症候群のリスクが4.7倍であることからも、受動喫煙が小さな子どもに与える影響の大きさがうかがえますね。
受動喫煙による小児の死亡は、主にアフリカなど開発途上国で目立つようです。でも「日本は先進国だから安心」というわけにはいきません。受動喫煙が幼い子どもの体を蝕むのは、紛れもない事実。
タバコの先から立ち上る煙や、タバコを吸う人から吐き出される息は、多くの子どもたちの未来を奪ってしまうものなのです。
家庭や職場での受動喫煙には、どんな影響が
受動喫煙の子どもへの影響も心配ですが、タバコを吸わない成人が、家庭や職場で受ける受動喫煙も深刻です。
国立がん研究センターによると「夫からの受動喫煙で、妻の肺腺がんリスクが上昇する」ことがわかりました。
タバコを吸わない女性で肺腺がんにかかっている人のうち、37%が「夫から受動喫煙を受けている」ことが判明。
女性の肺腺がん患者のうち37%が、「受動喫煙がなければ肺腺がんにかからなかった可能性が高い」とされたそうです。
また日本では、受動喫煙により肺がんや心臓病にかかり死亡する成人が毎年約6800人にのぼっており、そのうち約3600人は、職場で受動喫煙にさらされていた疑いがありました。
いかがでしょうか。
受動喫煙がもたらす健康被害は、想像以上に大きいと思いませんか?
タバコを吸わないのに肺がんや肺腺がんにかかった方の声などを調べてみても、やはり受動喫煙の影響は大きい模様。
たとえばタバコを吸ったことがないのに、肺がんにかかった新聞記者の男性。
この方は、取材先で受動喫煙にさらされることが非常に多かったそうです。
受動喫煙、あなたはどう感じていますか?
先日、学生時代の友人やママ友などに「受動喫煙」について聞いてみました。
すると皆さん、受動喫煙については相当困っているようでした。
(ちなみに全員、非喫煙者です)
「マンションのベランダでタバコを吸っている人がいて困る。窓を閉めていても臭いが入ってくるし、子どもへの影響が心配。マンションの管理会社に『ベランダでの喫煙をやめるよう周知してくれないか』とお願いしたが、『ベランダでの喫煙に配慮をお願いします』といった弱腰のチラシが配られただけでガッカリ。管理会社の人自身がタバコを吸うのかも・・・」
「夫の実家に行くと、おじいちゃんがタバコの煙を子どもに吹きかけながら話しかける。それがイヤでイヤで仕方がない。子どもが病気になったら、おじいちゃんのせいにしたいぐらい」
「職場でのランチで、妊婦の職員がいる目の前でタバコを吸い出した男性社員がいた。妊婦さん本人は『やめて』となかなか言えないようだったので、皆で『妊婦さんの前でタバコを吸ってはダメ』と言った」
「お寿司屋さんで、同僚が『タバコを吸ってもいいですか?』と聞いてきました。同僚はすでにタバコを手に持っていて、吸う気満々。そこで私が『臭いからやめてください』とキッパリ言たところ、明らかに不機嫌に。何なの?その態度!」
「職場で隣の席の人が、タバコを吸うためにちょくちょく席を外す。席に戻ってくると、その人の吐く息がタバコ臭くて頭が痛くなる。耐えられなくなって、上司に席替えを申し出た」
なかには加害者になってしまった人も。
「一戸建てのベランダで夫がタバコを吸っていたところ、近所から苦情が。それ以来、近隣の方々とギクシャクするようになってしまった」
実はわが家の近所にも、家の外でタバコを吸う人がいて困っていました。小学生の通学時間帯に毎日玄関先で喫煙し、タバコの煙を外にまき散らしていたのです。
その方については町内会長が本人に直接注意をし、やめてもらいました。皆、受動喫煙から身を守るべく毎日必死なんです。
さいごに
現在、徐々に受動喫煙防止の動きが広がってきています。
自治体によっては「子ども連れの客は禁煙席に案内しなくてはならない」という条例がしかれているところも。
でもまだまだ中途半端な分煙だったり、時間帯限定の禁煙のため臭いが残っていたりと、全面禁煙にはほど遠い状態です。
受動喫煙による健康被害がここまで明らかになった今、そろそろ本気で「STOP! 受動喫煙」を考えなければなりません。
受動喫煙をしない・させないようにするためにはどうしたらよいか。
喫煙者・非喫煙者ともに手を携えて、受動喫煙の犠牲者のいない社会を目指していきたいですね。